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No.114 内部統制狂想曲
概要
・金融商品取引法に基づき、上場企業に対して内部統制の構築が求められている。
・内部統制の仕組みを作るための多大な労力と費用の割に効果は薄い。
・悪法も法なので守らなければならない。
・業務フローの作成は、業務の見直しやマニュアル化に役立つ良い機会。
(2007/12/03)

内部統制とは
 全ての上場企業とその連結子会社に対して、2009年3月期決算から金融商品取引法に基づき、内部統制報告書の提出が義務づけられます。内部統制報告書に対しては、監査法人による監査証明が必要となります。

 そのため、3月決算企業の場合、来年4月から内部統制という仕組みを社内に作り、監査法人の会計士さんにその有効性を評価してもらい、お墨付きを得なければならないのです。上場企業の管理部門の方々は、内部統制対応の真っ最中だと思います。大変ですよね。

 なぜこんな法律ができたのかというと、最近多発している会計不祥事を少しでも防止するためです。元はと言えば、アメリカのエンロン社の経営破綻が引き金です。倒産の原因が不正な会計処理でした。そのため、アメリカではSOX法という法律が制定され、上場企業に対して決算書への不正な操作を防止するための仕組み作りを義務づけました。最近の日本でも、循環取引や売り上げの不正計上などが話題になりましたよね。

 アメリカのSOX法が日本の金融商品取引法に大きな影響を与えたということから、今回の内部統制の仕組み作りの義務化については、「JSOX(じぇーそっくす=日本版SOX法)」とも言われています。

 今回のひとことはちょっと長めです。
 (それで1日公開が遅れたわけではありません。日曜日に所用があったためです。申し訳ありません。)

悪法も法
 上場している企業の株は誰でも購入することができます。株を購入する人の多くは決算書にて業績を判断しています。その決算書に不正があれば、たくさんの投資家が被害を受けます。正しい決算書がなければ正しい判断ができない。...正論です。

 でも、個人的に言わせてもらえば、この法律はかなりの悪法です。その理由は、内部統制の仕組みを作るための多大な労力と費用の割には効果が薄いと考えられるからです。

 まず労力。内部統制の仕組み作りのためには、決算に影響を与える全ての業務について、業務フローと業務マニュアルを作成します。リスクを洗い出して表にまとめ、業務フロー通りに業務が行われているかを、今後は定期的に点検し、悪ければ改善を行わなければなりません。1社だけならまだしも、連結決算を行っている会社は子会社も含めて、この仕組みを整備しなければならないのです。管理部門の社員が何人いても足りないでしょう。

 10社以上で連結している企業は本当に大変だと思います。100社を超える企業の連結決算を行っている会社があったら、まず会社の数を半分に減らしてから内部統制の仕組みを作るべきだと思います。

 次に費用。社員から内部統制のための要員を割り当てなければならないという人件費増加に加え、コンサルタントにもお金を払わなければなりません。監査法人は内部の社員だけで作った内部統制の仕組みを認めてはくれません。第3者の助言を受けて構築した仕組みでなければ、お墨付きをくれないのです。なぜなら、この法律ができたことで、監査法人が株主から訴えられる可能性が高くなったからです。アメリカのエンロン社の事件でも、担当していた会計事務所が破綻に追い込まれています。

 また、外部コンサルに支払う費用は、企業の規模にもよりますが、数千万円〜数十億円と言われています。もったいない。個人情報保護法を思い出しますね。

 今回のコンサルティングを受けたところで、純粋に費用であり、売り上げに何の貢献もしません。ただ、将来のリスクをほんの少しだけ小さくするだけのこと。利益が減少すれば、株価は下がるに決まっていますから、株主に良い影響はありません。

 最後に効果。内部統制の仕組みは主に一般社員が行う業務を対象にします。しかし、会社を傾かせるような不正は一般社員には難しいです。だって上司がいますから。経営者に上司はいません。あえて言えば株主や監査役ですが、大株主が経営者というオーナー企業の場合、経営者の心が少しでも悪の誘惑に負けてしまった場合、誰も不正を止めることができないのです。

 私は内部統制よりも経営者統制が必要だと思います。不良経営者が悪いことばっかりやってるから、まっとうな商売をしている正しい経営者と多くの社員が被害を受けているとも言えます。

 全ての上場企業とその連結子会社が対象という幅広い内容にもかかわらず準備期間が短いことや、監査する会計士さんの数が不足気味であること、内部統制の仕組み作りの具体的な方法が示されないことなど、悪法の要素を挙げればきりがありません。

 しかし、残念ながら悪法でも法なのです。守らなければ厳しい罰則が待っています。いきなり初年度からはないと思いますが、長期間に渡り監査法人のお墨付きを得られなければ、上場廃止になると言われています。上場廃止になれば株価は急落、株は塩漬け、信用がた落ち。悲惨です。場合によっては倒産でしょうね。

 いつも社長の視線は「外部」に向いているはずです。どうやって売り上げを増やすかを考えるのが社長の仕事ですから当然ですよね。今回の法改正を、たまには社長が「内部」に目を向ける良い機会だと考えて、内部統制の仕組みを作りましょう。

 上場を維持するためには、金も人もかかるんですよね。

せっかくやるからには
 内部統制はこれから始まる制度ですし、具体的な指針も出ていないので、これが正解というものがありません。せっかく多くの社員の貴重な時間を使って実施するのですから、少しでも効率的に行い、少しでも効果を高めたいですよね。そこで、一般的に言われているコツを紹介します。

1.全てをやらない
 内部統制の仕組み作りは、社内の全業務について詳細に行う必要はありません。会計処理に影響を与える業務に限定しましょう。そして、大きなお金を扱うところから順に実施していくことが大切です。

2.会計士さんとの打ち合わせ
 担当の会計士さんと打ち合わせをしっかりと行うことも大切です。会計士さんは、客観的な立場で監査しなければならないので、ああしろ、こうしろという指示はしてくれませんが、一般的な助言はしてくれます。

3.IT統制も必要
 アメリカのSOX法には存在しないのですが、今回の内部統制にはIT統制というものが含まれています。内部統制の仕組み作りにはITが不可欠だからだそうです。確かに最近は情報システムがなければ決算処理はできませんからね。なので、情報システムに対する不正や破壊を防止するための仕組み作りも、同時に必要となります。

 情報システム部門を持っていない上場企業は少ないと思いますが、良い機会なので人材確保と正しい管理を行うための仕組み作りをしましょう。内容については、現時点で監査法人によるシステム監査への指摘事項を受けていると思いますので、それに誠実に対応すれば良いでしょう。

 さらに詳しくIT統制について勉強したいという方は、COBITを参照すると良いでしょう。日本ITガバナンス協会から、COBIT4日本語版をダウンロードできます。(リンク集に追加します。)

4.3点セットは業務フロー
 3点セットとは、業務記述書、業務フロー、リスク統制表(RCM)のことです。内部統制の仕組み作りにかかせない資料だと言われています。特に重要なのは業務フローです。業務を可視化することで、不正を防止するだけでなく、業務の効率化や、業務の引き継ぎの効率化につながるからです。業務フローは時間軸と組織(および情報システム)の軸の中に記号や図形で表現すると判りやすいと思います。

5.他の仕組みを流用
 すでにISO9001を取得しているような企業の場合、主な業務のフローは整備済みだと思います。これを可能な限り流用しましょう。ISO9001の仕組みが正しく機能していれば、内部統制の仕組みと同様の役割を果たしていると考えられるからです。

 これらのコツを使ったとしても、来年の4月から内部統制の仕組みを正しく運用できる企業は数少ないと思います。建築基準法の改悪も同様ですが、もう少し法律を制定してから施行までの期間を長くして、具体的で実務的な指針を出して欲しいと思います。政治家や役所の皆様は、もう少し実務を勉強してください。

 今回の内部統制についてですが、同じ上場企業でも有利不利があります。例えば、2月決算の企業は3月決算の企業に比べて11ヶ月もゆっくりと対応できるのです。つまり、2月決算の企業は3月決算の企業の状況を見ながら内部統制の仕組み作りができるのです。不公平ですよね。

 2月決算というのは、結構お得だと思いますよ。将来上場しようと思って会社を作る方は検討してみてください。実は弊社も2月決算です。(上場しようとは思っていませんが。←上場できないの間違いです。)

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