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No.117 専門家の育成
概要
・防衛省に対する商社の水増し請求事件を見て不安を感じた。
・専門家を育成できない制度や組織に問題がある。
・無意味なローテーション人事制度は組織を危うくするので廃止すべき。
・特に官公庁は専門家を内部に抱える努力が不足している。
(2008/01/13)

水増し請求で思うこと
 世の中に専門家が足りなくなってきているような気がします。これが様々な問題を発生させていると思いますので、今回は専門家の育成について書きます。

 今日、テレビで防衛省に対する商社の水増し請求事件を取り上げていました。それを見ていて、専門家の不在とその問題点の大きさを強く感じました。番組の中で石波防衛大臣が外部や民間から専門家を招いてチェックできる体制を作りたいというような発言をしていました。

 私のような民間人は、防衛省の人間は専門家集団であり、武器については何でも知っていて、価格が水増しされた事ぐらい簡単に見抜けると思っています。たぶん、他の皆さんもそうだと思います。だから、防衛大臣の専門家を招くという発言に違和感を感じました。専門家って、結局は防衛商社の人間だったりしてね。(笑)

 中には2倍以上の価格で水増し請求されたものもあるとのことで、とても驚きました。誰も文句を言わないのか、それとも言えないのか、はたまた言わない方が得をするのか...。本当に知識がないという単純な理由だけなのかもしれませんし、税金という他人の金を使って仕事をしているとチェックが甘くなるのかもしれませんし、あえて予算を使い切るために見て見ぬふりをしているのかもしれません。

 しかし、この状況について考えてみたら、悲しいことですが、情報システムの世界も似たり寄ったりだと言うことに気がつきました。

 基準が判らない値引き、必要のない保守費、高額な設定作業費、原価は安く無駄な機能ばかり搭載して高価で低速なOS、個人情報保護や内部統制という言葉だけで販売しようとする高額なソフトウェア、費用対効果を考慮していない情報化投資...。

 残念なことですが、専門家がいないために無駄金を使っている企業や組織は本当に多いです。

専門家の育成
 「専門家」の反対の言葉って「汎用家」でしょうか。英語だとスペシャリストの反対はゼネラリストと言います。ゼネラリストが増えて、スペシャリストの育成ができていないのは、制度や組織に問題があると思います。

 現状、一般的なゼネラリストの育成方法だと、2〜3年周期で定期異動を行います。これをローテーション人事と言います。仕事を少しかじって、判ったような気がしたころに新しい部署へ異動するため、専門知識なんて全く身につきません。2〜3年で異動すると判っていたら、勉強なんてするわけがないです。最終的に経営者になるのならともかく、定年までに無駄になってしまう可能性の方が高いからです。

 本当のゼネラリストというのは、スペシャルな知識を複数持っている人の事だと思っています。でも、一つの分野に対して最低でも10年は懸命に勉強しないと一流にはなれないでしょう。(中には特別な人もいると思いますが。)そのようなスーパーゼネラリストは単一のスペシャリストよりも優遇されるのは当然だと思います。

 でも、ローテーション人事により製造されるゼネラリストは、普通の人とほとんど変わりません。なのに、多くの企業や組織では、普通のゼネラリストがスペシャリストよりも優遇されます。不思議ですね。人事異動は大変な事だという間違った考えがあるからだと思います。残されて仕事を引き継ぐ方がずっと大変なのにね。

 人事部門も人を動かすことが仕事だと勘違いしている人が多いです。異動させることや部門間の調整をすることが人事部門の仕事ではありません。本人の希望を考慮し、特性を見抜いて、最も輝くことができる場所を提供することが人事異動の本来の目的でしょう。

 人事制度も専門家のための制度を作っている企業は少ないと思います。誰もが役員になることを目指して仕事をしているわけではないです。そのため、専門家は会社に不満を持ち、転職していきます。残るのは使えないゼネラリストだけ。

 そして専門家不在の組織は、商社やメーカに簡単に騙されてしまうのです。

ローテーション人事は廃止せよ
 そこで2つの提案をします。

 まず人事制度ですが、専門家を重視した制度を作るべきだと思います。ゼネラリスト=複数のスペシャルな技能を持つ人材と定義することから始めましょう。

 ローテーション人事の言い訳の一つに幹部の育成を挙げることが多いのですが、幹部という職種は立派な専門家です。責任の取り方、謝罪の仕方、会議の運営、部下の育成や評価、面接、法律や制度の熟知、他部署や協力業者との交渉、契約への知識、営業の経験などなど。2〜3年で人事異動を繰り返す事で身につくレベルではありません。まず1つの部署を10年経験させて専門家にする方が先です。その専門家の中から幹部という専門家を目指す人材を募り、専用プログラムを作って育成すべきだと思います。

 次に人事異動ですが、無意味なローテーション人事は廃止しましょう。ただ単に人を回しているだけの人事異動は組織に悪影響しか与えません。新入社員の時に、様々な職場を経験させて本人の適正を見るようなローテーション人事は良いと思います。また、本人の希望による異動も良いと思います。幹部育成プログラムに基づくローテーション人事も良いと思います。

 専門家の育成はとても大変だと思います。小さな組織では、全ての分野で人材を育成するのは困難だと思いますが、その場合は、私のような外部の専門家を利用すれば良いのです。でも、大きな組織だったら全ての分野で専門家を育成する余裕もあるでしょう。防衛省の事件を見る限り、特に官公庁は専門家を内部に抱えるための努力が不足していると感じます。

 今回は「人事部長のひとこと」みたいになってしまいました。

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