| No.123 SaaSってさあ |
| 概要 |
・SaaSは、インターネット接続環境が必須である事やセキュリティなどで問題が多い。
・しかし、利点も多いので、低価格ならば、中小企業の選択肢に入る。
・会計だけでなく、人事、給与、勤怠など様々なサービスを一元的に提供して欲しい。
(2008/04/06)
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| SARSもSaaSも怖いです |
何年か前に「ASP」という3文字略称がよく使われていた時期がありました。これは、アプリケーション・サービス・プロバイダの略で、インターネット経由で様々なソフトウェアを提供するサービスの事です。
クライアントPC側にはブラウザがあれば動作するので、ソフトウェアをインストールしなくても利用できます。また、アップグレードもASPを提供する会社側で実施されるため、クライアントPCを管理する側の手間が省け、かつ、最新の機能が利用できるという利点もありました。
しかし、利用価格が結構高かったのと、機能面でクライアントPCに直接インストールする競合ソフトウェアに劣る製品が多かったため、あまり普及しませんでした。
また、マイクロソフト社製のウェブサーバであるIIS上で動作する、動的にウェブページを作成する機能も同様にASPという略称で呼ばれていました。(アクティブ・サーバ・ページズの略)巨大企業がさかんにこの機能を宣伝したので、非常に紛らわしかった記憶があります。
この「ASP」というサービスが、最近になって名前を変えて登場してきたようです。今度は「SaaS」という名前だそうです。呼び方は「サース」です。濁りません。「サーズ」と濁って発音しまうと「SARS」という怖い病気になってしまいます。注意してください。(紛らわしい名前ばかりつけないで欲しいですね。)
ソフトウェア・アズ・ア・サービスの略だそうです。中身はほとんどASPと同じです。でも、異なる点が一つだけあると思います。それは、他のソフトウェアとの連携を前提にしている点だと思います。(他にもあるという方もたくさんいると思いますが。)SaaSは、他のソフトウェアから利用されやすく設計されています。ただし、なぜかSaaS間のインタフェースを標準化しようという動きはないようです。
このSaaSを使って中小企業のIT利用を促進しようということで、国の政策に組み込まれました。確かに中小企業のIT活用は進んでいないことは事実だと思います。でも、残念ながら現状のSaaSでは中小企業の状況を変えることは難しいと思います。
SaaSもSARSと同様に怖い面が多いからです。
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| SaaSの欠点 |
まず、インターネット接続環境が必須であることです。
「今やインターネットなんて、どこの企業でも使っているよ」と思ったら大間違い。中小企業の中でも小規模企業では、パソコンすら無いという会社もまだまだ現実的に多いのです。そんな会社がパソコンを購入して、毎月何千円ものインターネット接続料を支払った上で、月額何千円ものSaaS利用料を払うわけがありません。
仮に小規模企業がパソコンを購入したら、最初にパソコンでやりたいと思うことは会計処理でしょう。本当に小規模ならエクセル(または、オープンオフィスのカルク)で十分ですし、少し大きめの小規模企業なら弥生会計で十分だと思います。小規模企業なら古いバージョンでも十分使えるので、保守費を払う必要もありません。現状の代表的なSaaS版会計ソフトを使うよりも弥生家計のパッケージソフトを購入してインストールした方が圧倒的に安いです。
中規模企業ならSaaSを利用しようと思うかもしれません。会計ソフトに保守費を払っている企業なら経費節減になるかもしれません。しかし、会計データ移行は非常に難しいです。支援してくれる専門家がいればまだしも、中規模企業に現状の会計ソフトから無難にSaaSの会計ソフトにデータを移行できる人材がいるとは思えません。
仮に会計は移行できたとしても、人事、給与、勤怠、在庫管理、債権債務管理、発注管理など、中規模企業でよく会計と連携して活用されているソフトウェアが、現状では良いSaaS版が提供されていません。
じゃ大規模企業ならどうかというと、セキュリティに問題が多いと思います。
大規模企業では、1日でも会計ソフトが利用できなければ大変なことになります。現在は月次決算が普通ですし、決算期に止まったら最悪。上場企業なら死活問題です。
インターネット経由である以上、ネットワークがダウンしたら利用できません。社内ネットワークなら問題点を把握して即対策することも容易ですが、社外ネットワークだとどうにもならない場合が多いからです。ただし、NTTが推進している次世代ネットワークであるNGNを使えれば問題は解決しそうですが、そうすると費用面が課題になります。
また、重要な会計データを社外へ出さなければならないという問題もあります。企業の業績は、会計にちょっと詳しい人なら、特定の勘定科目に注目していれば容易に把握できます。信頼できる企業においてもインサイダー取引が問題になるご時世です。(NHKとか宝印刷とかプロネクサスとか)大企業がベンチャーが多いSaaS提供企業に重要情報を預ける危険を冒すとは思えません。
さらに、インターネットが接続されていればどこからでも利用できるというのは、便利に見えますが、セキュリティ面では欠点になります。ネットカフェや自宅からでも企業の重要なデータを閲覧できてしまうのです。もし、利用するためのIDとパスワードが外部の悪意を持った人間に流出したら怖いです。
と言うわけで、大企業が重要な業務に対してSaaSを使うという選択肢は存在しないと思います。スケジュール管理やeラーニング等の情報系ソフトウェアならSaaSを使う可能性はあると思います。それでも価格が安ければという話です。
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| こうなれば面白い |
じゃ、SaaSに未来はないのかというと、そんなことはないと思います。
まず価格です。SaaSの利用者が増えてくれば、提供価格はかなり下げることができると思います。パッケージは不要。流通も不要。ハードウェアは集中購買で劇的に下げることができます。動的な仮想化技術が進歩すれば、顧客数とハードウェア数を比例させなくても良くなるかもしれません。
簡単に言えば、パッケージソフトを買って4年使うよりも安い価格になれば、急速に普及する可能性が高いと思います。
例えば、楽天が電子商店街でシェアを握ったのも価格の要素が大きかったと思います。当時、月額10万円ぐらいの利用料が普通だった所を、月額5万円で利用できたのですから。
また、中規模企業でよく利用される人事、勤怠、給与のソフトウェアは会計と比較すると高価です。会計と連動する人事、勤怠、給与のSaaS版、つまり、SaaS−ERPが登場し、その価格が安かったら、採用しようと思う中規模企業は多いと思います。ERPは高価なものが多いですから。
SaaSはベンチャー企業にとって大きなチャンスだと思います。なぜなら大手メーカは、既にパッケージを持っています。そのシェアを下げる可能性のあるSaaSへは参入できないでしょう。どのベンチャー企業が安くて使いやすいSaaS−ERPを作り上げるかが楽しみです。そして、日本のSaaS−ERP企業がSAPやEBSを打倒して欲しいと思います。
さらに大規模企業に利用してもらうためには、SaaS−ERPのカスタマイズ提供サービスや、NGNの活用、IDとパスワードによる認証だけでなくIPアドレスによる制限、情報漏洩対策、障害対策や安全性確保のための組織や体制作り等が必要になるでしょう。
ただし、ここまでやると、どうしても提供価格が上がってしまうので、シェアを確保し利益を上げることができるかは微妙だと思います。よって、当面はパッケージに対抗しうる提供価格にした上で、中規模企業以下が対象になるのではと思います。
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